大腸癌治療ガイドラインをわかりやすく解説!

がんには「治療ガイドライン」があります。現段階でもっとも有効性と安全性が確認されている治療法や検査法などがまとめられたもので、いわば「がんの治療マニュアル」のような存在です。

治療ガイドラインは、書籍として販売されているほか、インターネット上で閲覧できるものも多くありますので、患者さんが自由に利用することができます。また、医師も治療法を提案する際に、ガイドラインを活用しています。

大腸がんの治療ガイドラインにはどのような内容が書かれているのか、分かりやすくご紹介しましょう。

大腸がんの治療ガイドラインとしては、「大腸癌研究会」が作成した「大腸癌治療ガイドライン」がもっとも広く活用されています。ここでは、そのガイドラインの内容についてご紹介していきます。

治療ガイドラインの目的とは?

治療ガイドラインは、国内外から集めた多くのデータをもとに、今の段階でもっとも安全かつ有効性が高いと思われる検査方法や治療方法をまとめたものです。そのような治療法を「標準治療」と呼びます。

治療ガイドラインがあることで、患者さんが治療法を検討しやすくなるほか、「病院によって治療法が全然違う」というようなことがなくなっています。

医師も最新の治療ガイドラインを参考にするため、標準治療については全国どこの病院でも共通の理解が得られているのです。

ステージ別の治療アルゴリズム

治療ガイドラインでは、まずステージ別にどの治療法を行なうべきかの説明をしています。たとえばステージT〜Vではどうか、W期にはどんな治療法があるのか、再発や転移した場合はどうなるのか、といった情報です。

分かりやすくするため、「治療アルゴリズム」というフローチャートの図が掲載されています。

2010年度版の「大腸癌治療ガイドライン」では、以下のようにまとめられています。

T〜V期までの治療方針

治療法を検討するためのフローチャート(T〜V期)

T〜V期までに発見された大腸がんは、上記のようなフローチャートで治療法が検討されます。ごく早期の段階で、腫瘍の直径が2センチ未満であれば内視鏡治療、それ以外は手術です。

内視鏡治療の対象になっても、切除した組織を生検にかけた結果、思わしくない結果が出た場合は手術となります。

W期の治療方針

治療法を検討するためのフローチャート(W期)

遠隔転移の見られるW期では、原発巣(大腸にできた元の病巣)と、転移先の病巣の両方に対してどんな治療をするかを決める必要があります。

手術ができる場合は手術を、できない場合は放射線療法や化学療法、もしくはそれ以外の緩和ケアを検討します。

再発

治療法を検討するためのフローチャート(再発)

再発した場合は、再手術ができるかどうかが大きな分かれ目になります。できない場合は、全身状態によって抗がん剤治療を行なうかどうかを決めます。

状態が良くない場合は、むしろ抗がん剤は体に負担をかけるため、症状を和らげるための対症療法に切り替えます。

上記のほか、部位別に転移した場合の治療方針など、「このような時はどの治療法を選ぶか」についての情報が治療ガイドラインには載っています。

こういった標準治療の情報をもとに、医師と患者さんとでどの治療に向き合っていくかを話し合うことになります。

大腸がんの各治療に関する詳しい情報

ステージ別の治療アルゴリズムに加え、治療ガイドラインでは各治療法の詳しい解説が書かれています。

たとえば、ひと口に「手術」といっても、さまざまな術式があり、どのような場合にどのような術式が望ましいか、などの情報が書かれてあるのです。

大腸がんの治療ガイドラインに掲載されている、治療法の解説の一部をご紹介しましょう。

内視鏡治療

適応となるのは「粘膜内〜粘膜下層への軽度浸潤がん」で、「直径は最大2センチ未満」「肉眼型(見た目の形)は問わない」と記載されています。

また「リンパ節転移の可能性がほとんどなく、内視鏡治療で病巣を一括切除できるサイズと部位にあること」が原則となっています。

さらに、内視鏡治療には「ポリペクトミー」や「内視鏡的粘膜切除術」などいくつかの方法があり、腫瘍の大きさや形状、組織型などを考慮して決定する必要がある、と書かれています。

手術

開腹手術と腹腔鏡手術についての詳しい解説が載っています。

たとえば腹腔鏡下手術は、「病巣の部位や進行度などの腫瘍側要因に加え、肥満や開腹歴などの患者側要因、さらに術者の経験や技量を考慮して適応を決定する」と書かれており、慎重な判断を要することが分かります。

またリンパ節をどこまで郭清(切除)するかについても、基準が示されており、たとえば「SMがん(粘膜下層まで浸潤したがん)では10%ほどリンパ節転移の可能性があるため、D2郭清が必要である」と明記されています。

化学療法

化学療法の解説では、術前や術後に行なう「補助化学療法」と、手術のできない場合に行なわれる化学療法の2つに分け、それぞれに推奨される薬剤や投与期間などについてまとめられています。

たとえば、手術後に再発防止の目的で投与される「術後化学療法」の場合、適応となるのは原則として「がんを完全に取り除くことができたステージVの大腸がん」で、「主要な臓器の機能が保たれていること」が原則となります。

推奨される治療法は「5−FU+LV 療法」「UFT+LV 療法」「FOLFOX4 療法または mFOLFOX6 療法」などで、投与期間は6ヶ月が原則です。

放射線療法

放射線療法も、手術と合わせて行なう「補助放射線療法」と、緩和ケアを目的とした「緩和的放射線療法」の2つに分けて解説されています。

補助放射線療法としては、術前照射・術中照射・術後照射の3種類があり、それぞれがんの浸潤の程度などによって適応が決まります。

また、術前・術後の放射線療法は化学療法との併用が標準的で、抗がん剤は5−FU(フルオロウラシル)が標準である、と書かれています。

治療ガイドラインだけで治療法を決められない場合は

このように、大腸がんの治療ガイドラインには治療法に関するさまざまなデータが掲載されており、それを参考に個々の患者さんの治療法を検討していきます。

ただし実際は患者さん1人ひとりによって状態も違いますし、年齢や体力なども総合的に考慮に入れる必要があるため、必ずしもガイドラインにぴったりの治療法が載っているわけではありません。

たとえば早期に大腸がんを発見できて、患者さんにまだまだ体力もあり、手術をすれば高確率で完治できると判断される場合、医師も患者さんも迷いなく手術を選択するでしょう。

しかし患者さんが高齢であったり、もはや手術できる状態ではない時期に発見されたりした場合、治療法の選択肢は一つとは限りません。

「こういうケースではどんな治療法を選択するべきか」と悩んだ場合は、他の病院でセカンドオピニオンを求めてみるなどして、もっとも自分が納得できる治療法を探すことも大切です。

治療ガイドラインは非常に有用ですが、それがすべてではなく、治療法の選択には患者さん本人の意思も大きく関わってくることを覚えておきましょう。

スポンサードリンク

ページの一番上へ
サイトのTOPページへ