大腸がんの転移の解説と治療法

がんという病気の恐ろしさの一つが、「転移」です。

がんはもともと発生した場所から徐々に広がるだけではなく、血管やリンパを通して全身に広がる可能性があり、転移先でも新たな病巣を作るというやっかいな性質を持ちます。

大腸がんが特に転移しやすいのは、肝臓です。他にも肺や脳などに転移することがあり、転移先の部位によってさまざまな症状が出てきます。

転移すると一般的に治療は難しくなりますが、大腸がんの場合、状態によっては根治手術も可能です。大腸がんの転移について詳しく解説していきましょう。

大腸がんが転移するしくみ

がんの転移とは、がん細胞が血管やリンパ管に入り込んで遠くまで運ばれ、別の場所に移動することです。そこで再び増殖して腫瘍を形成するという、やっかいな特性で、治療を難しくする大きな原因となっています。

血管を通して転移することを「血行性転移」、リンパを通して転移することを「リンパ行性転移」といいます。

がんの治療では手術が基本となりますが、目に見える病巣はきれいに切除できたとしても、腫瘍からはがれ落ちたがん細胞が、既に周りのリンパ節や血管に入り込んでいることもあります。

そのようながん細胞を確認する術は今のところなく、時間の経過とともに再び成長して、腫瘍として見つかることになるのです。

このような転移を防ぐために、手術では病巣のまわりを広めに切除したり、近くのリンパ節を一緒に切除したりします。また、残してしまったかもしれないがん細胞を攻撃する目的で、術後に抗がん剤を使うこともあります。

大腸がんが転移しやすい臓器と、その症状

大腸がんが転移しやすい場所は以下の通りです。

肝臓

大腸がんがもっとも転移しやすい臓器が、肝臓です。血行性転移によって運ばれます。

大腸からの血液は、最初に「門脈」という肝臓につながる血管に集まるため、大腸がんは肝臓に転移しやすいのです。肝臓に転移することを「肝転移」といいます。

肝臓は代謝を担う重要な臓器のため、非常に丈夫にできており、全体の3分の2が病気に侵されても問題なく活動できるといわれています。そのため、がんが転移しても症状が出にくく、「沈黙の臓器」とも呼ばれるほどです。

腫瘍が大きくなって、初めて黄疸(皮膚や白目、尿などが黄色くなる症状)や倦怠感、食欲不振、体重減少などが現れるようになります。

毛細血管に囲まれた肺も、血行性転移しやすい臓器です。肺転移すると、咳や血痰など、肺がんと同じような症状が出ます。また進行すると胸水がたまり、強い呼吸困難を起こすことがあります。

肝臓と肺ほど多くはありませんが、大腸がんが脳に転移することもあります。脳転移の症状は人それぞれで、頭痛やめまい、吐き気などのほか、病巣のできた部位によって運動障害や言語障害、人格障害などが現れます。

頻度は低いものの、大腸がんが骨転移することもあります。この場合は骨がもろくなってすぐに骨折したり、強い痛みが出たりします。

転移した大腸がんの治療法は、複数ある!

転移した大腸がんの治療法は、一つではありません。個々の状態によって、最適な方法を検討する必要があります。

手術

通常、がんの転移というと手術ができないイメージがありますが、大腸がんの場合は状態によってできることもあります。

たとえば肝転移や肺転移していても、他の臓器には転移しておらず、原発巣も切除可能な場合は手術の対象になります。ただし、十分な肝機能や肺機能などが保たれていることが条件です。

原発巣も転移巣もきれいに切除できれば、ステージWであっても完治できる可能性はゼロではありません。実際、W期の大腸がんを克服した患者さんもいます。

化学療法

手術はできないけれども、患者さんの全身状態が悪くない場合は、化学療法が検討されます。抗がん剤は血液に乗って全身に運ばれるため、体内にできた複数の腫瘍に効く可能性があるからです。

大腸がんでは、「FOLFOX療法(フルオロウラシル・フォリン酸・オキサリプラチン)」や、「FOLFIRI療法(フルオロウラシル・ロイコボリンかレボホリナート・イリノテカン)」、「5-FU+LV療法(フルオロウラシル+ロイコボリン)」などが多く行なわれています。

また、肝転移の場合、肝臓に直接抗がん剤を注入する「肝動注療法」が行なわれることもあります。肝臓に対してより効果的に薬を届けることが可能です。

放射線療法

病巣に放射線を照射して、腫瘍を縮小させ、症状を和らげるための治療です。骨盤内や肺、脳などに行なうのが主で、病巣の数などに応じてスケジュールが立てられます。

脳の場合、病巣が多発している場合は全脳照射、3〜4個以内であれば狙いを定めた定位放射線照射を実施します。

その他の治療

肝転移では、手術や抗がん剤のほかに、「熱凝固療法」が行なわれることもあります。特に、マイクロ波を使った「マイクロ波凝固療法」がよく行なわれています。

これは電極を腫瘍に差し込んで、マイクロ波を流して高熱を発生させ、腫瘍を熱の力で凝固させて死滅させるという方法です。

マイクロ波は電子レンジに使われている電波の一種で、同じ治療によく使われるラジオ波よりも周波数が高く、高熱を生み出すため、治療時間が短く済むメリットがあります。

一方、一度に凝固できる範囲が狭いため、何度かに分けて行なわなければいけない点がデメリットです。

その他、治療の選択肢が限られてきた後の大腸がんでは、鎮痛剤の投与や、腹水・胸水を抜くための処置など、つらい症状を緩和させるための対症療法が中心となります。

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